シルバーウィーク、従業員は休めても社長は休めない ― 小さな会社の「人の悩み」と向き合う
経営者 従業員 関係
1. 連休のたびに感じる、経営者だけの孤独
シルバーウィーク。カレンダーには赤い数字が並んで、従業員は旅行や家族の予定を楽しそうに話しています。
でも、社長であるあなたの頭の中は、きっと別のことでいっぱいです。
「先月辞めたいと言っていたあの子、連休中に気持ちが固まってしまわないか」
「休み明けに有給申請が何枚も来たら、現場が回らない」
「自分だけが会社のことを考えている気がする」
こうした不安は、経営者なら誰でも一度は感じたことがあるはずです。そして厄介なことに、この気持ちは従業員には絶対に言えません。
「うちの社長、休みの日まで仕事の話するんだよね」と思われたくない。だから黙っている。連休が来るたびに、その沈黙が少しずつ重くなっていく。
この記事は、そんな経営者の方に向けて書いています。
2. 経営者と従業員は「見えている景色」が違う
経営者と従業員の関係は、よく「同じ船に乗っている仲間」に例えられます。でも実際には、船長と乗客くらい、見えている景色が違います。
| 場面 | 経営者の見え方 | 従業員の見え方 |
|---|---|---|
| 給料日 | 資金繰りと天秤にかけながら払っている。来月も払えるか不安 | 当然もらえるもの。遅れたら不信感につながる |
| 残業 | 人が足りないから仕方ない。でも残業代の負担は痛い | やった分はちゃんと払ってほしい。サービス残業は論外 |
| 連休 | 売上が止まる。でも休ませないわけにはいかない | 法律で決まっている権利。遠慮なく使いたい |
| 退職 | 育ててきたのに…。引き継ぎや採用コストが頭をよぎる | 自分のキャリア。辞めるのは自由 |
| 会社の将来 | 24時間365日、頭の片隅にある。家族の生活もかかっている | 正直あまり考えない。待遇次第で転職も視野に入れている |
どちらが正しい、どちらが間違っている、という話ではありません。立場が違えば、見え方が違うのは当たり前です。
問題は、この「景色の違い」をお互いが知らないまま、日々の業務が進んでいくことです。
3. よくある”すれ違い”のパターン
私は札幌で社会保険労務士として、多くの中小企業の経営者とお話ししてきました。その中で繰り返し耳にする「すれ違い」のパターンがあります。
パターン1:「家族みたいに思っていたのに」
小さな会社では、社長と従業員の距離が近い。一緒にご飯を食べたり、プライベートの相談にも乗ったりする。社長は「うちは家族みたいなものだ」と本気で思っている。
でも従業員にとっては、あくまで「職場」です。ある日突然「今月で辞めます」と言われて、社長だけが深く傷つく。これは本当によくある話です。
パターン2:「なぜわかってくれないのか」
売上が厳しいとき、社長は必死にコストを切り詰めている。ボーナスも我慢してもらっている。なのに従業員から「もっと給料を上げてほしい」と言われる。
社長の頭の中:「こっちは自分の報酬をゼロにしてでも会社を守っているのに」。でも、それは言えない。言えば言うほど、溝が深くなるとわかっているから。
パターン3:「法律がそうなっているから」
有給休暇、残業代、産休育休、ハラスメント対策。法律で義務づけられていることは年々増えています。経営者は「わかってはいるが、現実にはそんな余裕がない」と感じている。
一方で従業員は、SNSやニュースで「権利」の情報を日々目にしています。「うちの会社、法律守っているのかな」という目で職場を見るようになる。この温度差が、静かにトラブルの種を育てています。
4. すれ違いが「労務トラブル」に変わる瞬間
経営者と従業員のすれ違いは、ほとんどの場合、すぐには問題になりません。お互いに我慢しながら、なんとなくやり過ごしているからです。
しかし、ある日突然「事件」が起きます。
- 退職した元従業員から、未払い残業代の請求書が届いた
- 労働基準監督署から突然の呼び出しがあった
- 従業員がハラスメントを外部機関に相談した
- SNSに「うちの会社はブラックだ」と書き込まれた
- 退職時に有給休暇をまとめて消化され、引き継ぎができなかった
- 連休明けに複数人が同時に退職届を出してきた
こうなってからでは、対応にかかるコストは何倍にもなります。未払い残業代であれば過去3年分の遡及、労基署の是正勧告、場合によっては付加金(制裁的な追加支払い)まで発生します。
でも、多くの経営者は「うちは大丈夫だろう」と思っています。いま読んでくださっているあなたも、心のどこかでそう思っていませんか。
5. 一人で抱え込むことが、いちばんのリスク
中小企業の社長は、人の悩みを誰にも相談できません。
「家族に話しても、経営のことはわかってもらえない」
「同業の社長仲間にも、うちの内情はさらけ出しにくい」
「弁護士に相談するほどの話じゃない…と思いたい」
その結果、社長一人の頭の中で問題を抱え続けることになります。これが、実はいちばん危ない状態です。
人の問題は「正解」が見えにくい。だから考えれば考えるほど不安になり、判断が後手に回ります。気づいたときには小さな不満が大きなトラブルに育っている。そんなケースを、私は何度も見てきました。
大事なのは「相談できる相手がいること」です。それも、労働法や社会保険の実務をわかっている相手に、です。
6. 社労士にできること ― 経営者と従業員の橋渡し
社会保険労務士(社労士)は、経営者と従業員のあいだに立つ専門家です。どちらかの味方ではなく、法律という共通のルールをもとに、双方にとって最善の着地点を見つけるのが仕事です。
- 就業規則の整備 ― 「暗黙のルール」を明文化して、認識のズレをなくす
- 給与計算と勤怠管理 ― 残業代の計算ミスや未払いリスクを根本から防ぐ
- 労基署対応 ― 突然の調査や是正勧告にも、社長の隣で対応します
- 助成金の活用 ― 人材育成や正社員転換に使える公的資金を、申請から受給まで一括サポート
- 退職・解雇トラブルの予防 ― 問題が起きる前に、リスクを洗い出して対策を講じる
- 経営者の相談相手 ― 「こんなこと聞いていいのかな」という話こそ、気軽にお電話ください
行政書士の資格もあわせ持つことで、許認可の申請や法人設立、融資の相談にもワンストップで対応できるのが五合庵の強みです。「人の悩み」だけでなく「お金の悩み」も含めて、経営のパートナーとしてお付き合いできます。
「顧問契約」という選択肢
トラブルが起きてから慌てて専門家を探すのは、体調を崩してから病院を探すのと同じです。
月々の顧問契約があれば、ちょっとした疑問もすぐに電話やメールで相談できます。「こんな場合、法的にはどうなんですか?」「この従業員にどう対応すればいいですか?」――そうした日常の小さな判断が、大きなトラブルを未然に防ぎます。
給与計算や社会保険の手続きもまとめてお任せいただければ、社長は本業に集中できる時間が生まれます。
筒井 久司(つつい ひさし)
五合庵行政書士・社労士事務所 代表。行政書士・社会保険労務士・社会福祉士のトリプルライセンス。札幌を拠点に、中小企業の労務管理・助成金申請・融資相談を一括サポート。土日・夜9時まで対応。
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