年末調整の記入ミス、訂正方法は?二重線・訂正印から提出後の直し方まで社労士が解説
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給与計算・年末調整
~ 給与計算シリーズ|従業員から戻ってきた申告書が間違っていたら。直し方と「提出した後」の対応 ~

年末調整の申告書を従業員に配り、戻ってきた束をめくっていくと、こんな書類が混ざっていませんか。
- 扶養している家族の「所得」の欄に、アルバイトの年収がそのまま書いてある
- 生命保険料の金額が、証明書と合っていない
- 去年の様式の申告書に書いて出してきた
- 消した跡が修正テープだらけで、元の数字が読めない
社員数人の会社では、社長や経理担当者が1人でこれをチェックしていることがほとんどです。そこで迷うのが「これ、どうやって直せばいいの?」という点です。
しかも令和8年分(2026年)の年末調整は、扶養の判定基準や申告書の様式が変わる年です。去年と同じ感覚で書くと、従業員も会社も間違えやすくなります。
この記事では、申告書の記入ミスを見つけたときの直し方を、年末調整の前・後に分けて、社長や担当者の立場から整理します。
先に全体像をまとめます。記入ミスは、気づいたタイミングで直し方がまったく変わります。
| 気づいた時期 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 年末調整の計算前 | 従業員本人(会社は確認役) | 申告書を本人に直してもらう。紙なら二重線で消して正しく書く |
| 計算後〜翌年1月31日 | 会社 | 正しい申告書を出し直してもらい、年末調整をやり直す(再年末調整)。源泉徴収票も作り直す |
| 翌年2月以降 | 原則として従業員本人 | 本人が確定申告(税金が戻る場合は更正の請求)で直す。会社は正しい源泉徴収票の発行などで協力する |
年末調整の前に見つければ、二重線で直すだけで済みます。後になるほど、会社の手間も従業員の手間も増えていきます。受け取った時点でのチェックが一番の節約です。
紙の申告書で書き間違えた場合は、間違えた部分に二重線を引き、その上か横の余白に正しい内容を書きます。元の文字が読める状態で残しておくのがポイントです。
税務関係の書類は、令和3年4月から一部の例外を除いて押印が不要になりました(国税庁「税務関係書類における押印義務の見直し」)。年末調整の申告書も押印欄がなくなっているので、訂正のたびに印鑑を押してもらう必要は、法律上はありません。
ただし、会社のルールとして「訂正したところには印かサインを」と決めておくのは自由です。誰が直したのかが後から分かるので、むしろおすすめです。
修正テープで消してしまうと、何をどう直したのかが後から分からなくなります。税務署の調査で申告書を見られたときにも説明がしにくくなるので、使わないよう従業員に伝えておきましょう。直す箇所が多くて読みにくい場合は、新しい用紙に書き直してもらう方が確実です。
申告書は、従業員本人が会社に申告する書類です。会社が誤りに気づいても、本人に確認せずに書き換えるのは避けましょう。扶養している家族の収入など、会社が知らない事情があるかもしれないからです。
担当者が「たぶん年収を書いたんだろう」と判断して、所得の欄を修正テープで消し、自分で計算した数字を書き込む。
本人に「娘さんのアルバイト収入は年間いくらの見込みですか」と確認し、本人に二重線で直してもらう。急ぎで会社が直す場合は、本人に確認した日と内容を余白にメモしておく。
二重線や訂正印の話はありません。会社が差し戻し、本人が入力し直して再提出するのが基本の流れです。差し戻した記録が残るので、誰がいつ直したかも分かります。
令和8年分は、扶養親族の所得の基準が「58万円以下」から「62万円以下」(給与収入だけなら136万円以下)に変わるなど、去年と判断が変わるところがあります。改正の内容をふまえると、次のようなミスが特に起きやすいと考えられます。
| よくある記入ミス | 確認するところ・直し方 |
|---|---|
| ① 去年の様式に書いている/令和8年分と令和9年分を取り違えている | 用紙の右上などの「令和〇年分」を確認。年末調整の時期は、今年(令和8年分)の申告書と、来年の給与のための令和9年分の扶養控除等申告書を同時に集めることが多く、取り違えが起きやすい |
| ② 家族の「所得」の欄に「収入(年収)」を書いている | 給与収入なら、給与所得控除を引いた後の金額が「所得」。本人に年収を確認し、正しい所得を書いてもらう |
| ③ 去年の基準(給与収入123万円)で扶養から外している | 令和8年分は給与収入136万円以下なら扶養親族になれる。去年は対象外だった家族が対象になることもある |
| ④ 19〜22歳の子の書き漏れ・申告書の出し忘れ | アルバイト収入が給与で136万円を超えても197万円以下なら「特定親族特別控除」の対象になりうる。年末調整でこの控除を受けるには「特定親族特別控除申告書」の提出が必要 |
| ⑤ 生命保険料控除の新しい欄の書き漏れ | 23歳未満の扶養親族がいる人は、一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に上がる。保険料控除申告書の新しい欄(23歳未満の扶養親族について)に記入があるか確認 |
| ⑥ 保険料の金額が証明書と違う | 証明書に「年間の見込み額」と「証明日までの金額」の両方があるときは、原則として年間の見込み額を使う。新旧の区分(新制度・旧制度)も証明書どおりか確認 |
| ⑦ 生年月日・マイナンバー・住所の誤り | 源泉徴収票にそのまま反映されるため、後で再発行の手間が出る。前年の書類や社員台帳と照らし合わせる |
※金額・基準は国税庁「令和8年分 源泉徴収・年末調整の主な改正点」などによります。個々の控除額の計算や判定に迷う場合は、顧問の税理士の先生にご確認ください。
架空の例で考えてみます。社員の娘さん(20歳・大学生)のアルバイト収入が年150万円の見込みです。社員は「去年の基準(123万円)を超えるから」と、扶養控除等申告書に娘さんを書きませんでした。
150万円は令和8年分の扶養の基準(136万円)も超えるので、扶養控除は使えません。ただ、19歳以上23歳未満で給与収入197万円以下なので、特定親族特別控除の対象になる可能性があります。書かなかったままだと、本来受けられる控除が抜け落ち、本人が税金を多く払うことになります。
このように、「書いてあること」だけでなく「書いていないこと」にもミスが隠れています。家族構成が分かる社員には「19歳から22歳のお子さんはいませんか」と一声かけるだけで防げます。

源泉徴収票と給与支払報告書の提出期限(翌年1月31日)までなら、会社で年末調整をやり直せます。正しい申告書を本人に出し直してもらい、計算し直して差額を精算し、源泉徴収票を作り直して本人に渡し直します。
原則として会社では直せなくなり、本人が確定申告(税金が戻る場合は更正の請求)をして精算します。会社は正しい源泉徴収票を出すなどして協力します。前の年や2年前の分に気づいた場合の手順と住民税への影響は「年末調整のミスに後から気づいたら」で詳しく解説しています。
令和8年分からは、提出のしくみも変わります。令和9年1月1日以後に出す令和8年分の源泉徴収票は、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署にも源泉徴収票を出したものとみなされるようになりました(国税庁「給与所得の源泉徴収票等のみなし提出の特例」)。
提出した後に誤りに気づいた場合は、正しい内容の給与支払報告書を市区町村に出し直すのが基本です。ただ、訂正の出し方(「訂正」として出すのか、紙の場合はどうするのか)は市区町村によって案内が違うので、出し直す前に提出先へ確認しましょう。住民税の額にも関わる部分なので、ここを直し忘れると、翌年6月からの住民税が間違ったままになります。
⚠ 「小さいミスだから」と放置しない
所得税が足りなかったまま放置すると、会社に不納付加算税や延滞税がかかることがあります。誰がどこまで負担するのかは「年末調整・給与計算のミスは誰の責任?」で整理しています。
記入ミスは、受け取ったその場で見つけるのが一番楽です。本人がまだ近くにいるうちなら、確認も訂正もすぐに済みます。
| 受け取ったときに見るところ | 確認 |
|---|---|
| 「令和8年分」の用紙か(令和9年分・去年の用紙と混ざっていないか) | □ |
| 家族の欄の金額が「収入」ではなく「所得」になっているか | □ |
| 扶養の判定が、令和8年分の基準(給与収入136万円以下)になっているか | □ |
| 19〜22歳の子がいる人に、特定親族特別控除申告書が必要ないか | □ |
| 23歳未満の扶養親族がいる人の、保険料控除申告書の新しい欄 | □ |
| 保険料の金額・区分が証明書と一致し、証明書が添付されているか | □ |
| 生年月日・マイナンバー・住所が前年の書類と一致しているか | □ |
| 修正テープではなく二重線で直されているか | □ |
このほかの「計算する側」のミス(中途入社者の前職分の合算漏れなど)は「年末調整の間違い10選」にまとめています。
法律上は必要ありません。税務関係の書類は令和3年4月から原則として押印が不要になっています。二重線で消して正しく書けば足ります。誰が直したか分かるように、会社のルールとして印やサインをもらうのはかまいません。
何を直したのかが分からなくなるので、おすすめしません。直した箇所が金額や家族の情報など大事な部分なら、新しい用紙に書き直してもらう方が安心です。来年からは、配る時点で「修正テープは使わないでください」と一言添えておきましょう。
申告書は本人が申告する書類なので、本人に確認してから直すのが基本です。急ぐ場合でも、電話などで本人に確認し、確認した日と内容を余白にメモしておきましょう。後で食い違いが出たときに、会社を守る記録になります。
正しい内容で作り直して、本人に渡し直します。市区町村や税務署にすでに提出していた場合は、正しい内容で出し直す必要があります。出し直し方は提出先によって案内が違うので、先に確認してください。源泉徴収票は本人が住宅ローンや確定申告にも使う書類なので、早めに直しておきましょう。
税務署に不足分を納める義務は会社にありますが、足りなかった所得税はもともと本人の税金なので、本人に精算してもらうことができます。詳しくは「年末調整・給与計算のミスは誰の責任?」をご覧ください。
- 紙の申告書は二重線で消して正しく書く。訂正印は法律上は不要
- 修正テープは使わない。会社が本人に確認せずに書き換えない
- 年末調整の後でも、翌年1月31日までなら会社でやり直せる
- 令和8年分は扶養の基準(給与収入136万円以下)や様式が変わる。去年の感覚のままの記入に注意
- 令和8年分からは、給与支払報告書を出せば源泉徴収票も税務署に出したものとみなされる。訂正は提出先の案内を確認
年末調整の記入ミスは、従業員が悪いわけでも、担当者が不注意なわけでもありません。毎年ルールが少しずつ変わる書類を、年に一度だけ書くのですから、間違えて当然です。大事なのは、受け取った段階で気づける仕組みを会社に持っておくことです。
当事務所では、税金の判断が必要な部分は顧問の税理士の先生と連携しながら、給与計算と年末調整の「別の目」としてお手伝いしています。今年は改正が多いので不安だという方は、提出前の一度だけのチェックからでもご相談ください。
集めた申告書と計算結果を拝見し、
記入ミスと計算の漏れを社労士がチェックします。
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